祈りさびら
新生讃美歌433 祈りさびら
6月を迎えるとき、私たちが忘れてはならない日があります。それは6月23日、沖縄地上戦が組織的に終結した日です。沖縄ではこの日を「慰霊の日」と制定し、沖縄戦の戦没者の霊を慰めて平和を祈る特別な一日とされています。一般県民を巻き込み、20万あまりの尊い命と財産や、沖縄の文化財、自然がことごとく奪われた沖縄戦は、太平洋戦争で、唯一、日本国内の一般住民が地上戦を体験したという、まさに地獄そのものでした。沖縄戦における20万人を越す戦死者のうち、約半数に近い、じつに9万4000人余りの戦死者が、兵隊以外の一般県民や子供でした。
日本バプテスト女性連合ではこの6月23日を「沖縄 命(ぬち)どぅ宝の日」とし、いつも沖縄を覚えて平和を祈り、悔い改めの実として福音宣教のために活動していくことを決めました。日本バプテスト連盟は1955年に「国外」宣教師として調正路師を沖縄に派遣し、沖縄伝道を開始してしまった過ちの歴史があります。1988年の連盟第47回定期総会で、沖縄を「国外」と位置づけたことを神の前に悔い改め、隣人性の欠如、歴史に対する認識の欠如が沖縄の人々に大きな悲しみを与えたことを謝罪しました。同時に沖縄バプテスト連盟との新しい関係づくりを目指し、両連盟が協力しつつ、新しい宣教プロジェクトを模索していくことになりました。私たちも沖縄の方々が今もさまざまに痛みを負い続けていることを覚え、過去を悔い改めつつ、「平和を造り出す者は幸いである」というイエスのみ言葉を分かちあい、伝えていく者でありたいと願います。
そこで今月は、以上のことを覚えつつ、沖縄で生まれた賛美歌で、新生讃美歌433番の「祈りさびら」をご一緒に賛美して参りましょう。この賛美歌は1999年古堅宗伸氏によって書かれました。当時、首里バプテスト教会牧師であった古堅氏が1992年に沖縄バプテスト連盟宣教100周年を記念して編著出版した『琉球讃美歌』を通して琉球の賛美歌が広く知られるようになり、日本バプテスト連盟が作者に作詞作曲の依頼をしたことから生まれた賛美歌がこの「祈りさびら」です。
琉球では、ベッテルハイム宣教師による宣教が1846年より始まりました。師は楽器も携えて伝道し、賛美の普及に重きをおいていたそうです。『琉球讃美歌』第1版は1913年に出版され、以来、方言による賛美歌は歌い継がれています。
曲は典型的な沖縄音楽の特徴であります琉球音階が使われています。琉球音階とは鍵盤で「ドレミファソラシド」と弾いたときの「レ」と「ラ」を抜く(つまり「ドミファソシド」と弾く)のが西洋音階との最大の違いです。沖縄県全域や与論島(よろんじま)、沖永良部島(おきのえらぶじま)で多く使われている音階です。この音階は、台湾、インドネシア、インド、ブータン、チベットなどにもみられ、アジアに広く分布しています。
●作詞・作曲 古堅宗伸(ふるげん・むねのぶ)氏
1940年沖縄県に生まれる。1968年日本聖書神学校卒業、新潟県新井教会、青海伝道所、那覇バプテスト教会協力牧師、首里バプテスト教会牧師、08年まで志村栄光教会を牧会し、引退。2011年10月1日71歳召天。
<2021年6月賛美紹介 日野神明キリスト教会にて>
参考文献:新生讃美歌ハンドブック、女性連合資料